第13章 八十八橋の呪詛
車が走り出すと、おもむろになずなが口を開いた。
「……新田さん、この任務が他の術師に引き継がれるのはいつ頃ですか?」
「まだ決まってないっスけど、準一級以上の案件になるなら、たぶん明日以降じゃないと術師の都合がつかないっス」
伏黒の帰りを待つのもそうだが、引き継ぎまで可能な限り情報収集するために、今夜はとりあえずホテルに泊まることになるという。
「今朝、藤沼さん達を送る時に八十八橋の肝試しの手順は聞いておいたっス。私はその手順に間違いないか、他の人にも聞いてみるっスから、その間、3人はホテルで休んでてくださいっス」
「俺達は行かなくていいの?」
「今回は手順の確認だけなんで、大丈夫っス。それに皆さん、昨夜ずっと橋にいて休んでないっスよね?」
新田がバックミラー越しに虎杖と目を合わせて答える。
が、すぐに野薔薇が切り返してきた。
「新田ちゃんだってそうじゃん」
「私は車の中で仮眠を取ってたんで、それほどでもないっスよ。それに状況によっては、実際に橋に行って確かめるかもしれないっスから、いざという時のためにも休んでてほしいっス」
自分は寝たから疲労は溜まっていないとなずなも主張したものの、結局3人はホテルで降ろされ、新田1人で聞き込みに行ってしまった。
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「伏黒くんはああ言ってたけど、ちゃんと帰ってくるかな?」
「少なくとも一度は帰ってくるんじゃない?アイツ、肝試しの手順知らないだろうし」
たとえ1人で八十八橋に行くつもりでも、昨夜何も出なかったことを踏まえると、手順の確認は不可欠だろう。
そうなると、新田が聞き込みを終えた段階で一度合流し、夜に単独で抜け出すかもしれない。
「もしも伏黒くんが1人で八十八橋に行ったら、私、尾行しようと思うの」
先程は伏黒に押し切られたかと思われたなずなだったが、その実全然諦めていなかった。