第13章 八十八橋の呪詛
『事情は分かりました。津美紀さんの護衛ですね』
電話口の伊地知は他の術師のスケジュールを確認しているのか、少し間が空いた。
『ですが、今手の空いているのが二級術師の方だけで……』
「二級……」
自分と同じ等級……
それならば自分が行くのと変わらない。
『被呪者の数がこちらの想定よりずっと多いとなると、呪いの等級も見直さねばなりません』
続けて伊地知から自身の見解も伝えられる。
『おそらく虎杖君の成長を加味した上で割り振られた任務。そこから更に危険度が上がるとなると、二級術師の手には余るかと……皆さんも同様です。個人的には撤退をすすめます』
電話を切った伏黒は口を引き結んだ。
とりあえず、伊地知が津美紀の安否を確認してくれることになったが、伏黒の中の不安は大きくなるばかりだ。
どうする……?
俺だけでも今すぐ津美紀の入院先に向かうか?
いや、もう4人でも危険な任務だ。3人だけには任せられない。
来週には五条先生も帰ってくる。
その時改めて……
違ぇだろ!
問題はタイムリミットだ!
呪霊が襲ってくるタイプじゃなく、マーキングした人間の内側から術式が発動するタイプなら、側で守り続けても意味がない。
今すぐ祓うしかない……!
そう結論づけて、そこまでの段取りをどうするかといったところで、3人の気配がすぐ近くにあることに初めて気づいた。
「なんで伊地知さんと話してんの?」
「お姉さんに連絡ついた?」
「津美紀の姉ちゃん無事だったか?」
三者三様に心配そうな表情だ。
3人を自分の我儘で危険に巻き込むわけにはいかない。
「……問題ない。それより任務の危険度がつり上がった。この件は他の術師に引き継がれる。オマエらはもう帰れ」