第13章 八十八橋の呪詛
「当時、八十八橋に1人で行ったわけじゃないわよね?誰と行ったか覚えてる?」
野薔薇が重ねて尋ねると、藤沼の不安はより強まってしまう。
「あの、やっぱり何か関係が……?」
「自動ドアとはね。でも森下さんが亡くなったのには関係ないっスよ。私の大学のレポートを伏黒君達に手伝ってもらってるんス。『心霊スポットにおける電磁波と電化製品への影響』ゲロダルいっス!」
新田は安心させるように指で丸を作った。
「でも、色んな人の話聞きたいから、一緒に行った人を教えてほしいっス」
呪いのことを悟られないように、殺された被害者とは何の関係もないと思わせるように、新田は言葉を選ぶ。
嘘つくからには助けないと……!
藤沼はホッと安堵して、話を続けた。
「肝試しに行ったのは部活の先輩2人……そうだ、伏黒君、あの時津美紀さんも一緒にいたよ」
その一言に虎杖達に衝撃が走った。
藤沼が伏黒に向けた言葉、同名の他人とは考えにくい。
津美紀―伏黒の姉も八十八橋の呪いの被呪者……!
「……そうか、じゃあ津美紀にも聞いてみるわ」
虎杖も野薔薇もなずなも目を見開いて固まる中、伏黒はいたって普通そうに答えていた。
一通り話を聞いた後、自転車の2人乗りは見過ごせないと新田が藤沼姉弟を家まで送ることになり、虎杖達はコンビニに残る。
「伏黒」
虎杖の呼びかけは聞こえなかったのか、伏黒は俯いたまま。
「伏黒!しっかりしろ!まずは安否確認だろ?」
虎杖に肩を掴まれ、伏黒はハッとする。
「……大丈夫だ。悪い、少し外す」
今まで見たことのない程の張り詰めた表情。
伏黒は明らかに動揺していた。
3人が心配そうに見ていることにも気づかず、伏黒は少し離れた場所で伊地知に電話をかける。