第13章 八十八橋の呪詛
空が白んできたところで虎杖が大きなあくびをした。
「……ちょっと、呪霊の呪の字も出ないじゃない」
野薔薇も眠くて口調に力がない。
野薔薇の声が聞こえたのか、鵺にもたれて寝ていたなずなが目を覚ました。
明るくなってきている空を見て青くなる。
「ご、ごめん!私、起きられなかった……?」
「起きるも何も、一晩中呪霊が出なかったのよ」
「……え、そうなの……?」
朝日が昇り始めた頃に新田の車が4人を迎えに来た。
コンビニで朝食を買い、駐車場で各々買ったおにぎりやサンドイッチを開封し、食べながら情報を整理する。
「残穢も気配もまるで感じられませんでした」
「っスか……となるとハズレ、振り出しっスかね」
伏黒の報告に新田はため息をつく。
そこへ虎杖が口を挟んだ。
「でも時間をかけるのはマズくね?」
「なんでよ?」
「だって有名な心霊スポットなんだろ?呪われてる人はまだまだいるかも……しかも今のところ致死率100%。これ以上の人死には勘弁だろ」
野薔薇の問いかけに答えた虎杖になずなもうなずく。
「確かに、バンジージャンプじゃなくても行ってる人はいそうだよね」
実際にバンジージャンプするかはさておき、心霊スポットなら興味本位で行く者は一定数いるだろう。
全員が黙り込んでしまうかと思われた中、ピコーンと新田が何か閃いたように手を打った。
「流行ってたのはバンジーっスよね。“飛び降りる”って行為が鍵なんじゃないっスか?」
しかし、それは即座に伏黒に否定される。
「それはもう虎杖で試しました」
「えぇっ!もしかしてあのビニール紐で飛んだんスか!?」
虎杖がビニール紐でぐるぐる巻きにされて、勢いよく突き落とされる絵図が浮かび、新田は呻きながら頭を抱える。