第13章 八十八橋の呪詛
「着いたっス」
鯉ノ口峡谷 八十八橋―
両側を高いフェンスに囲われた大きな橋だ。
夜ということもあり、歩行者はいないが、伏黒の言っていた通り、自動車は普通に通行している。
「呪霊が確認でき次第、帳を下ろすっス」
新田は橋の手前で虎杖達4人を降ろし、別の場所に移動する。
呪霊が出た時にすぐに橋を封鎖できるようにするためだ。
橋には特に変わったところはなく、もちろん呪いの気配もない。
そこで、虎杖は手にしたビニール紐を使い、あることを試そうと橋の中央あたりに進む。
「うし、この辺だな」
「ほ、本当にやるの……?」
「何もないんだから、やるしかないでしょ」
心配そうに虎杖を見ているなずなを野薔薇が腰に手をあてながらたしなめた。
その後ろで伏黒も同意する。
「虎杖なら心配ねぇだろ」
「で、でも……怪我だけはしないようにね……?」
なずなが渋っているのは、これからやろうとしていること―……
そう、虎杖は噂になっていたバンジージャンプを試そうとしているのだ。
しかも専用のロープではなく、コンビニで買ってきたビニール紐で。
「大丈夫だって!なんなら紐なしで飛び降りても着地できる自信あるし」
無謀にも思える行動だが、虎杖も根拠なしで言っているわけではなかった。
以前、交流会に侵入してきた特級呪霊との戦いではここより高い所から落ちたが、多少負傷した程度で済んでいるのだ。
足にビニール紐を結び、軽く屈伸した後、ビシッと片手を挙げる。
「じゃ、行ってくる!」
そう言うや否やノータイムで柵を飛び越え、下に落ちていった。