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妖刀使いの臆病呪術師【呪術廻戦】

第13章 八十八橋の呪詛



さいたま市内、某所―

夕日が差し込む室内で、床に円筒形の瓶が置かれていく。


「こういう呪物ってさ、なんで壊さないの?」

真人はそう言って頭を掻いた。

彼は以前、七海と虎杖の前に現れ、魂に触れてその形を変える術式・無為転変を使い、里桜高校の吉野順平を殺した特級呪霊だ。


先日、交流会中の呪術高専に侵入し、宿儺の指と一緒に盗んだ呪物・呪胎九相図、瓶に入ったそれを眺めていると、背後の人物がその問いに答えた。


「壊せないんだよ、特級ともなるとね。生命を止め、他に害を為さないという“縛り”で存在を保障するんだ」

「でも宿儺の指は有害じゃんか」

「アレは特別。呪物と成って、その上20に分割しても尚、時を経て呪いを寄せる化物だよ」

真人の背後で壁に寄りかかっている呪詛師、夏油が説明を付け加えた。

「それ故に器を選ぶ」

「フーン、じゃあ、コッチは誰でもいいわけだ」


ニヤリと笑みを浮かべて、真人が顔を上げる。
視線の先には、全裸で壁に磔にされた男。
その辺で適当に捕まえてきた非術師だ。


「オイ、アンタ!金……金か!?オレ、そんな持ってないけどさっ、サラ金とかなんかあんだろ!?」

男は恐怖に顔を歪めながら、目の前にいる真人ではなく、少し後ろにいる夏油へ向けて必死に交渉を試みる。

しかし、夏油は聞く耳を持たないといった態度でフイと顔を逸らした。



その傍らで真人は3つの瓶の中の1つを開封し、中の呪物を取り出し、男の顎を掴んでこちらに向かせる。


「大丈夫かなぁ、この状況で俺が見えてないとか、マジで才能ないよ?」

オゴッと苦しそうに声を漏らす男の口を無理やり開かせ、その口内に容赦なく呪物を突っ込んだ。

「はい、あーん」

「お゛っ、おっ、おおおおぉぉお」

呪物を飲まされた男の目からどろりと血が流れ落ち、その姿を変えていく。









苦悶の悲鳴が止むと、男だったモノがゆらりと立ち上がった。

その姿はすでに人間ではなく、眼のない眼窩と鼻、口から血を流した小さな人面の下に、横に裂けた巨大な口を持つ異形となっていた。



「やぁ、起き抜けに申し訳ないんだけどさ、ちょっとお遣い行ってきてくんない?」


真人はその異形にある頼み事をする。



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