第13章 八十八橋の呪詛
一通り武田から話を聞いた5人は駐車場に戻ってきていた。
「当たり……っスかね」
新田が車の前で腕組みする。
被害者4人は中学時代に八十八橋へ行った時に呪いを受け、それが今になって発動したという線が濃厚だ。
「八十八橋なら俺も行ったことがあります」
「バンジーしに?」
伏黒から虎杖に無言の鉄拳。
「い゛ってぇ!」
「心霊スポットとかは、学校とかと同じで呪いが溜まりやすい。だから高専関係者が定期的に巡回するんだ」
伏黒は以前、その巡回を行ったことがあった。
「その時はなんともなかったですね。有名っちゃ有名でしたけど、普通に使われてる橋ですし」
「でも行ってみるしかないわよね」
「そうっスね」
野薔薇の言葉に新田がうなずいた。
呪いが発動したということは、元凶となっている呪霊はまだ祓われていない。
加えて、呪霊は基本的に発生した場に留まる特性があり、まだ八十八橋にいる可能性が高いのだ。
八十八橋に行かない手はないだろう。
「伏黒君」
車に乗り込もうとしたところで武田がやってきて伏黒を呼び止めた。
「すまない、気になることがあってね」
「どうしたんですか?」
「学校にいた時はいろいろ世話になってたんでな、津美紀君は元気か?」
「……はい」
やや間を置いて答えた伏黒は表情を変えない。
「ツミキって誰?」
覗き込むように質問してきた虎杖に、伏黒が肩をすくめた。
「……姉貴」
その言葉に1年生3人に衝撃が走った。
「伏黒くんってお姉さんがいたの!?」
「アンタ、自分の話しなさすぎじゃない!?」
「そーだそーだ!」
言うタイミングがなかったのもあるが、何より今の津美紀の状態のことで、虎杖達に心配をかけるのも、気を遣われるのもなんとなく嫌だったから、積極的に教えなかった……と言うと文句をつけられそうだったので、伏黒は半ば諦め気味に目を閉じた。