第13章 八十八橋の呪詛
とりあえず虎杖を殴っておく。
弾みでその後ろの野薔薇も巻き込まれ、ドミノ倒しになっていた。
伏黒は無視して聞き取りを続ける。
「あとバチ当たりな話とかあれば」
「黒い噂……?問題児とはいえ、並の中学生の域は出んよ……だが待て、バチ当たり?」
引っかかることがあるのか、顎に手を当てる武田に、やっとお辞儀から姿勢を戻した少年の1人が口を挟む。
「アレじゃないですか?八十八橋のバンジー」
「ヤソハチバシって?」
まだいたのかと目をすがめる野薔薇の横で虎杖が伏黒に尋ねる。
「自殺の名所。この辺で有名な心霊スポットだ」
自殺の名所、いかにも呪いが発生しそうな場所だ。
「おお、そうだ。深夜バンジージャンプをするのが、不良少年の間で流行ったんだ。いわゆる度胸試しだね」
武田もこの噂を知っていたようで、懐かしむように目を細める。
「どこの部族よ……」
「バ、バンジージャンプって……ちゃんとした施設じゃないと、下手したら死んじゃうよ……!」
「俺よりバカって、意外といるよな!」
「紐どうすんだよ」
これには虎杖を除き、日々呪霊と戦っている3人も引き気味だ。
そしてさすがに少年達も困惑したように眉を下げていた。
「俺達はやんないっスよ。親世代の先輩とかが話してるのを聞いただけで……」
当時を知る武田からさらに詳しい情報を得る。
「ある日、金田達4人が無断欠席をしてね。そう珍しいことでもなかったんだが、家に連絡してみると、前日から帰ってないというじゃないか。結構な騒ぎになったが、すぐに橋の下で倒れているのが見つかってね。大説教になったんだが、本人達は“何も覚えていない”の一点張りだったよ」