第13章 八十八橋の呪詛
時は遡り、2018年6月23日―
盛岡市のとあるマンションで男が電話口に怒鳴りつけていた。
「オイ、聞いてんのか?……だから、開きっぱなしなんだよ、オートロックのドアが!何回も言わすなよ!」
男の名前は金田 太一
彼は2週間ほど前から、マンションに戻る時に度々エントランスのドアが開きっぱなしになっていることを不気味に思い、管理会社に連絡を取っていた。
しかし、以前の点検では異常なし。
にもかかわらず、また同じことが起こったのだ。しかも一度や二度ではなく、もっと頻繁に。
それが金田を余計に苛立たせていた。
「先週も言ったよな?何のために高ぇ管理費払ってると思ってんだ!?ざけんな、今日中だ。今すぐ点検しろ!」
金田は怒りを露わにしていて気づかないが、マンションのエントランスの照明が不自然に明滅している。
「聞いてんのかって言ってんだろ?殺すぞ!」
その背後には、防犯カメラに映っていない不気味な影が近づいていた。