第12章 まさかの恋敵
後日
「……なんか最近、僕を見るなずなの目がちょっと怖いんだよね」
時たま廊下の角からじーっと見られていることがある。
もちろん好意的だとか熱っぽい視線などではなく、眉間に皺を寄せて睨んでくる。
まあ、なずななので迫力はないのだが、明らかに警戒されているようなのだ。
五条が首を傾げる傍らで、虎杖と野薔薇はなんとなしに目を合わせ、肩をすくめる。
2人とも原因を分かっているが、教える気は毛頭なかった。
「先生の自業自得だと思うよ?」
「なずなの心を弄んだんだから、当然の報いでしょ」
「待って、全然これっぽっちも心当たりがないんだけど……?」
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「そういえば渡辺、あれからどうなったの?」
商店街で例の事件があった日、虎杖は伏黒と一緒に先に帰っており、なずながどうなったのかを知らなかった。
相変わらずなずなは伏黒に近づけない、会話もできない調子が続いているが、伏黒の方は明らかに丸くなったというか、苛立ちが収まっているようなのだ。
それが少し不思議で聞いてみたのだが、尋ねられた野薔薇は一言言わずにはいられない様子で、キッと顔をしかめた。
「メールから始めるんだって、それなのにすごく喜んでんのよ、信じらんない!」
まずは文通から……一体、いつの時代なのだろうかと疑わしくなってくる。
控えめとか奥ゆかしいとかそんなレベルじゃねーだろ!?と痺れを切らす野薔薇に、虎杖は苦笑いした。