第12章 まさかの恋敵
電話を切った伏黒は人知れずホッと安堵の息をついた。
よかった、嫌われたわけではないことが分かって安心した。
正直、渡辺に嫌われたんじゃないかと考えた時は、釘崎や虎杖に嫌われるよりよほど堪えると思った。
なんだろうな、これ。
渡辺に避けられた時は胸がヒリついて、顔を合わせられないことに少し苛立って……
苛立ったといえば、渡辺がガラの悪い男に難癖つけられているのを見た時もそうだ。
彼女が男の言いなりになって、責任を取らされていたらどうなっていたか、考えるだけで怒りが込み上げてきた。
だが正反対なこともあった。
釘崎からとんでもないイタズラ電話がかかってきてブチギレた気がするが、その後渡辺が慌てたように言い繕ってきて、その時にやっと顔が合って、自分の中で渦巻いていた怒気があっという間に萎んだのだ。
完全に怒りが収まったというわけではなかったが、自分でもあれだけ腹が立っていたのが静まっていくのが不思議だった。
さっきの電話は少しぎこちなかったものの、久しぶりに渡辺とちゃんと話せた気がする。
何があったかまでは分からなかったが、いずれ言ってくれるようだし。
―き、嫌いになんてならないよ!―
この言葉が聞けただけで十分だ。