第12章 まさかの恋敵
「釘崎ヤバイって、伏黒に何言ったの?滅茶苦茶キレてんだけど……」
野薔薇となずなが戻ると、虎杖が焦りながら2人に耳打ちした。
やや離れたところにいる伏黒は手に持ったスマホを割らんばかりの力で握っている。
任務でもないのに、殺気立っているのが分かった。
その様相を見たなずなは慌て出す。
野薔薇ちゃんは私のために伏黒くんに電話してくれたわけで。
それで伏黒くんが怒ったのなら、野薔薇ちゃんのせいではなく、私のせい……
ここは自分がなんとかしないと……!
「ぁ、あああの、伏黒くん……あ、あれは野薔薇ちゃんが私のために、というか……その、私が聞きたかったことを、か、代わりに聞いてくれて……むぐっ!?」
「なずなは余計なこと言わなくていいわよ!」
野薔薇が慌ててなずなの口を塞ぐ。
なずなが伏黒と五条の関係を聞き出そうとしていたなんて、受け取り方によってはまずい方向に傾くこと必至。
一切隠さず素直に事実を話そうとするなずなの姿勢も誤解に拍車をかけそうで危ない。
何も言わせないのが吉だ。
「とにかく、悪かったわよ!さっきの電話も悪ふざけの一環。マジでキレないでよね」
まくし立てるように言われた伏黒は頭をガシガシと掻いて、苛立ちを紛らわすかのように息を吐いた。
「次やったら殴るからな」
言われなくとも二度とやるものか。
野薔薇もため息をつきたい気分だったが、自分達が招いた事態だけに自重することにした。