第12章 まさかの恋敵
「五条先生って、心は女の人だったんだね、全然知らなかった……」
「んなわけあるかっ!悪ノリしてただけよ」
「でも、ワタクシって……帰るわよって……」
なおも食い下がるなずなは、気が動転して五条の普段の、下手すると自分達よりバカやってる態度はすっかり抜け落ちているようだ。
仕方ない、後で伏黒にブン殴られるかもしれないが、その時は虎杖も道連れにしよう。
なずなの誤解を解くには本人に聞くのが手っ取り早いし、確実だ。
そう結論づけた野薔薇は伏黒に電話をかける。
そして開口一番―……
「伏黒、アンタ五条とデキてんの?」
そう尋ねて、すぐさまスピーカーフォンに切り替えた。
なずなは野薔薇のスマホに目が釘づけだ。
伏黒くんはなんて答えるんだろう?
聞きたくない気持ちと確かめたい気持ちがせめぎ合っている。
肯定されたら、どうしよう……?
私、立ち直れないかもしれない……
ドキドキドキドキと心臓がうるさい。
『…………は?』
予想だにしない問いかけに伏黒は理解が追いつかないようだ。
しかし、なずなのためにもきっちりハッキリ答えてもらわないと困る。
「だーかーらー、五条と恋人同士なの?」
『ハァッ!?んなわけねぇだろ、ふざけんな!』
電話口から伏黒の怒声。
もちろんそれは、なずなにもちゃんと聞こえた。
伏黒の怒りの言葉は続いていたが、最初の一言で十分だと野薔薇は通話を切ってしまう。
「……ほら、聞いたでしょ?アンタは失恋なんてしてないわ」
「……ぅん……!」
誤解が解けて一安心したなずなはうなずきながらポロポロと泣き出していた。
野薔薇は肩をすくめる。
まったくもう、この子は。
本当に心から伏黒に恋してる。
この顔を伏黒にも見せてやれば、アイツもちゃんと気づきそうなもんだけどね。