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妖刀使いの臆病呪術師【呪術廻戦】

第1章 妖刀事件




伏黒は二つ返事して東側の部屋へ続く廊下に踏み込んだ。
玉犬を呼び出し、気配を探らせる。


呪霊に襲われたのだろうか。

だが、渡辺家の現当主は一級呪術師だと聞いた。
もしその当主が敗れたのなら、相手は特級呪霊。
とても自分の手には負えない。


玉犬がある部屋の前で止まって唸る。
相変わらずの濃い呪いの気配で中に呪霊がいるかも分からない。

迷っても仕方ない、意を決して一息に戸を開ける。


「なんだよ、これ……!」


部屋中におびただしい血痕。
床には中年の女性と若い男性が倒れていた。

母親とその息子だろうか?

喉と腹を切られて死んでいる。



新一年生は女の子だよと言っていた五条の言葉が頭をよぎる。

「玉犬、生存者がいないか探せ」

玉犬に指示し、取り出したスマートフォンで五条に連絡を取る。

「……五条先生、居間で2人殺されてました。40代くらいの女性と20代くらいの男性です」

『たぶん比呂彦の奥さんと息子さんだ。周囲に呪霊は?』

「いません。玉犬には生存者も探らせてます」

『僕もこちら側の確認が終わり次第そっちにいくから』


一旦通話を切り、遺体に目を向ける。
この2人の遺体に違和感があったからだ。

呪霊が人を殺した場合、原型を留めていなくても、死体があればまだマシ。

そう、呪霊の仕業にしてはどこも欠損せずに遺体がきれいに残っているのだ。
血痕を見ても、斬られた後に引きずられたり、潰されたりはしていない。

傷口は鋭利なものでスッパリと斬られていた。
呪霊の爪や牙というよりは刃物で斬られた印象を受ける。

男性のすぐ横には短刀が落ちているが、刃先に血痕はない。凶器でないなら、これで応戦しようとしたのか?


考えを巡らせていると、不意に玉犬の吠え声が聞こえた。何か発見したのだ。



「玉犬、何か見つけたか……!」



玉犬の前には、血溜まりの中に呆然と座り込む少女がいた。




座り込んだ少女は伏黒と同年くらい。五条の言っていた新一年生のなずなだろう。
腕に血塗れの小さな男の子を抱いているが、男の子の白い顔色を見るにおそらくもう生きていない。


「大丈夫か?どこか怪我は?」

伏黒が少女に歩み寄って声をかけるが、無表情に伏黒を見返すばかりで反応がない。



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