第12章 まさかの恋敵
そこに追い討ちをかけるように、カツと靴音が鳴った。
「気安く触らないでもらえるかしら?泥棒猫ちゃん達ィ!!」
その声に振り向くと淡いブルーのシャツにサングラス姿になった五条がいる。
いつの間に着替えたのかと思ったが、よく見ると上着を脱いで、アイマスクをサングラスに変えただけだ。
手に持った上着をバサリと肩の後ろにやり、サングラスを少しずらして六眼を覗かせた五条は、なずな達に向かって言い放った。
「恵ちゃんはこれからワタクシと一緒にヴァイオリンのお稽古なのよ?……帰るわよ恵ちゃん、今日こそ『きらきら星』をマスターしてもらうわ」
やっちゃったよ、しかもノリノリだよ、この教師と額に手を当てる虎杖と野薔薇。
一方でなずなはこれ以上ないくらいに目を見開き、息をするのも忘れて愕然と五条を見つめている。
虎杖と野薔薇が伏黒に抱きついていた以上の衝撃だった。
抜群のスタイルにサングラスの隙間から覗く白く長い睫毛に縁取られた突き抜ける空のように青い瞳、くつろげたシャツからわずかに見える胸元はとても色っぽくて……
眩暈がするほど美しい。
ああ、眩しいくらいお似合いだ……
私が入る余地なんて、どこにもない。
胸が…………すごく苦しい。
耐えられなくなったなずなは、じり、じりと後退り、ついには背を向けて走り出してしまう。
「あっ、ちょっとなずな!」