第12章 まさかの恋敵
一旦電話を切った伏黒は、こめかみに手を当てる。
目印になりそうな場所がないか聞いたものの、チェーン店のカフェが次々と挙がってきてしまい、探すのは骨が折れそうだ。
だからといって探さないわけにもいかない。
「じゃあ俺、渡辺を探しにいってきます」
「俺も手伝うよ」
広い商店街の中を探すなら、手分けした方が早い。
「僕はパス……」
「私も……」
五条と野薔薇は暑さに負け、商店街を出てすぐの街路樹下のベンチで待ってることになった。
「じゃ、渡辺見つけたら、電話するから」
虎杖は片手を挙げて、大通りとは別の通りに入っていった。
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なずなが言っていたカフェの人魚のシンボルをキョロキョロと探すこと数分、足の向くままに歩いていたら、伏黒と分かれた大通りに出てしまっていた。
……ん?
伏黒、誰かと喋ってんのか?
大通りからもといた通りに戻ろうとしていた虎杖の目に、見知らぬ女性と話している伏黒が入ってくる。
会話の内容までは聞こえないが、女性の方は上機嫌なように見え、伏黒も特に邪険にしているわけでもない。
ハッと虎杖の頭の中にある可能性が閃いた。
これは、もしかして…………逆ナン!?
もしそうなら、渡辺にとっては良くない状況だよな……?
渡辺のためにも全力で阻止してやらねーと!
ある種の使命感に駆られた虎杖は、伏黒に気づかれないように気をつけながら、大急ぎで商店街の出口を目指した。