第12章 まさかの恋敵
「なずな、どこ行っちゃったのよ……?」
野薔薇は額に流れる汗を拭って、肩を落としていた。
課外授業のついでに立ち寄った商店街で休憩しようということになったところまではよかったのだが、まさかなずなが途中でいなくなるとは思いもよらなかった。
「ってか、俺達、ずっと一緒だったよな?」
虎杖が首を傾げるのも道理で、はぐれそうにない状況だったはずなのだ。
それなのに迷子になってしまうのが、なずなのなずなたる所以なのか。
重度の方向音痴は侮れない。
「僕らがどっかの店に入って、そこに来させればいいんじゃない……?」
五条の言葉にはやや力がない。
それもそのはず、今日は9月とは思えない程気温が高いのだ。
呪術師は職業柄、厚着することが多く、この真夏のような暑さは特に堪えた。
「渡辺にそういうことができるなら、今までだって苦労してませんよ」
伏黒が暑さにへばり気味の五条をたしなめる中、伏黒のスマホになずなから着信が入った。
それを見た虎杖と野薔薇は、お!と目を丸くする。
やはりこういう時になずなが頼りにするのは伏黒らしい。
まぁ、虎杖や野薔薇にかかってきても、理由をつけて伏黒に代わったかもしれないが。
『ご、ごめんなさい……あの、ふ、伏黒くん……わ、わわ、私、今どこにいるのか、分から、なくて……』
開口一番に謝るなずなは、緊張からか不安からか、声が震えている。
以前はここまで他人行儀ではなかったのに、と伏黒は少し落胆したが、今は彼女を落ち着かせるのが先だ。
「ちょっと落ち着け。商店街からは出てないな?」
『わ、分かり、ません……』
申し訳なさそうに尻すぼみになる声に、やれやれと小さくため息が漏れてしまう。
「上を見て、アーケードの天井があれば商店街の中だ」
『て、天井……?あ、あったよ』
「近くに目立つ店とかあるか?」
『え、っと……』