第3章 彼の心配の種
到着したのは都内の霊園。
「ここはちょっとした肝試しスポットになっていてね。近所の子供達がよく肝試しをしちゃうもんだから、定期的に呪いが発生するんだ」
五条の言う通り、霊園内には弱い呪いの気配があちこちにある。
数は複数いそうだが、強い呪霊はいなさそうだ。
なずなは鬼切を抜く。
数週間前に伏黒が見た時は禍々しい呪力を発していたが、今はもうそんなことはなく、通常の呪具に見える。
伏黒も式神を出すため影絵を作ろうとすると、五条に遮られた。
「おっと今回はなずなだけでやってもらう。恵は手を出しちゃダメだよ」
「えぇっ!?」
不安そうに声を上げたのはなずなの方だ。
なんとなく予想できていた伏黒は、あまり動じない。
「なずなは呪霊を祓うのは初めてだろう?どのくらい動けるか見ておきたいんだ」
「わ、分かりました……」
こくこくと頷くなずなは明らかに緊張している。
……あれ、本当に大丈夫か?
1人で霊園内の呪霊を探して、おどおどと墓を巡っているなずなの姿に、伏黒は一抹どころではなく心配になってきた。
さっきから風の音に驚いたり、木の枝を踏んで飛び退いたり、正直見ていられない。
「……手を出さないなら、近くにいても問題ないですよね」
五条の返事を聞く前に伏黒はなずなの頼りない背中を追いかけていった。
「ちょっと、なずなの邪魔はするなよー!……って、聞いちゃいないか」
まぁ、万が一なずながピンチになれば、恵は指示なんてお構いなしに助けるだろうから、心配なんてしていない。