第3章 彼の心配の種
なずなを待つこと数分。
伏黒は何回かなずなに電話をかけているが、長くコールしても出ない。
どうしようかと思案していると、五条に肩を叩かれた。
「恵、あれ見て」
パンダに連れられ、こちらに向かってくるなずなが見える。
オロオロとしながら、パンダの後をついて行く姿は遊園地で迷子になった子供のようだ。
「ほい、校門に到着っと」
「ありがとうございます、パンダ先輩」
なずなはぺこぺこと頭を下げ、何度もパンダにお礼を言っている。
「遅刻してすみません!」
「迷ったなら迷ったって連絡しろ」
「でも、その、昨日に引き続きだったから、迷惑なんじゃないかと思って……」
「別にそんなの迷惑でもなんでもない。連絡をよこさない方がよほど迷惑だ」
「……ご、ごめんなさい……」
なずなはしゅんと俯いてしまう。
「ヤダ、恵くんってば、コワーイ!カルシウムが足りてないんじゃないの?」
場違いに明るい五条の声が伏黒の神経を逆撫でしたが、その怒りをなずなにぶつけてしまったら、それこそ八つ当たりだ。
「……悪い、言いすぎた」
「ううん、悪いのは私の方。次からは迷子にならないように気をつけます」
「仲直りは済んだ?じゃ、今日のメインイベントに行こうか!」