第12章 まさかの恋敵
それからもなずなは相変わらず伏黒に近づけず、虎杖や野薔薇が気を揉む中、
ある日、事件は起こった。
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ど、どうしよう……?
またやってしまった……
なずなは途方に暮れて、1人佇んでいた。
この日、1年全員が五条に課外授業に連れ出されたものの、目的地にいた呪霊はあっという間に祓い終わった。
その後、休憩しようと商店街に入ったはいいが、様々な店に目移りしていたら、いつの間にか皆とはぐれてしまったのだ。
自分の今までのことを考えると、ただ歩くだけで合流できるとは思えない。
これまでなら、こういう時は必ず伏黒に連絡していた。
しかし、今は電話をかけることにさえ踏ん切りがつかない。
早く連絡しないといけないけど、どうしたらいいの……?
野薔薇ちゃんとか虎杖くんに電話する?
……で、でももし伏黒くんに代わられたら?
うまく話せる自信がない……
なずなは携帯電話に登録している連絡先を上へ下へカーソル移動させて、途方に暮れている。
「……あっ!」
間違えて通話ボタンを押してしまい、思いがけず、電話をかけてしまった。
慌てて電話の相手を確認すると、画面表示された名前に固まる。
ふ、伏黒くん!?
ど、どどどどうしよう!?
切るにはどうすればいいんだっけ!?
あたふたとボタンを押すが、ちっとも切れない。
狼狽えているうちに、コール音が止んだ。
相手が電話に出たのだ。
つ、繋がっちゃった……
なずなは震える手で携帯電話を耳に当てた。