第12章 まさかの恋敵
「も、もももうやめてっ!!」
遂に耐えきれなくなったなずなはそう叫ぶと、顔を覆って一目散に食堂を出て行ってしまった。
「ちょっとやりすぎちゃった……?」
唖然として呟いた虎杖の肩に野薔薇が手を置いた。
「さて虎杖、ここまで知ったからには分かってるわね?ちょっと伏黒に探り入れなさいよ」
「え゛やっぱり?」
食堂から逃げ出してしまうほどなずなを追い込んでしまった手前、虎杖も断りにくい。
「まず伏黒がなずなのこと、どう思ってるかよね」
「……うーん、好きか嫌いかなら好きな方だと思うよ?……ただ……」
「ただ?」
「伏黒ってさ、自分のこと嫌いっつーか、自己評価が高くないじゃん?自分が恋愛対象として見られるっていう感覚が最初からないんじゃねーかな。たぶん言われないとそういう意識すらしないと思う」
もちろん伏黒と会ってから半年も経っていないのだが、普段の様子や言動を見ている印象がそれだった。
ならば、伏黒に自覚させるにはどうするか、なのだが……
「伏黒とまともに話せなくなったなずなが告白なんてできると思う?」
これには虎杖も言葉に詰まった。
彼女だって恋愛に関しては絶対に奥手だろう。
しかも側から見ても自分の恋心を持て余している。そのうち「見てるだけで幸せ」とか言いかねない。
「こうなったら、会話せざるを得ない状況を作るしかないわね。任務の時に2人きりにするとか……」
「それはちょっと危ないんじゃね?五条先生とかに相談しなくていい?」
しかし、この提案は野薔薇に猛反対される。
「バカ、逆効果にしかならないわよ!あの教師に言ったら、メチャクチャからかうに決まってるじゃない。そしたらなずなは引っ込むし、伏黒だってムキになって否定するでしょ?」
そうなったら終わりだ。2人の仲を進展させるどころか破綻させかねない。
「た、確かに……」
「そのくらい考えなくても分かりなさいよね!」