第12章 まさかの恋敵
後片付けも終わり、任務で不在の伏黒以外の1年生3人は、そのまま夕飯を食べに食堂に来ていた。
そこでふと虎杖が伏黒に聞いたのと同じ質問を投げかけた。
「渡辺さ、伏黒となんかあった?」
「な、なな、なんで……?」
いきなりのことだったので、なずなは動揺を隠せなかった。
「だって最近、伏黒に近づかなくなったじゃん。伏黒も気にしてたし」
伏黒が気づいていない何かがあって、それを渡辺が伏黒本人に言いにくいと思ってるのなら、友達として仲直りの手助けができれば、と思っているのだが……
「……え、なんで赤くなってんの?」
虎杖の予想に反して、なずなの顔はみるみる赤くなった。
怒りとかそういう感情でないことは、その表情を見れば一目瞭然だ。
もしかして、これは思っていたのとは真逆のことなのでは。
確かめるように野薔薇に視線を送ると、肯定するように肩をすくめられた。
「渡辺って伏黒のこと好きなの!?」
虎杖が驚いてなずなを見ると、耳まで真っ赤にして目を泳がせている。
ボソボソと何か言おうとしているが、言葉になっていない。
「ま、分かりやすいわよね」
なずなの隣に座った野薔薇は、頬杖をついて嘆息する。
判明した同級生の恋愛事情に、虎杖は一気に興味津々になった。
「そっかそっか、伏黒、いい奴だもんな!……でも、だったらなんで避けてんの?」
「意識しすぎてんのよ。今時女子中学生だってもっと積極的だってのにね」
針の筵状態のなずなに代わって野薔薇が答える。
そこからはなずなにとって公開処刑にも等しかった。
いつから意識するようになったのかだの、好きになったきっかけは何だったのかだの、先日野薔薇に問いただされたことをおさらいとばかりに話す羽目になり、なずなが言葉を濁すと、すかさず横から野薔薇が答えてしまう。
「この前、TDLの写真を渡したんだけど、伏黒が写ってる写真をすごく熱心に見てたのよ」
「マジで!俺にも送ってくれてる?どの写真?」
即座に虎杖がスマホを取り出し、画像をスライドし始める。
野薔薇もこれとこれと、と指差して教えていくので、なずなにとっては気が気ではなかった。