第12章 まさかの恋敵
夕方に訓練は終わり、パンダや伏黒をはじめ、任務がある者は先に分かれ、残った生徒で後片付けする。
なずなも後片付けを手伝おうと立ち上がるが、表情が曇っていたらしく、野薔薇が怪訝そうに尋ねてきた。
「なずな、まだお腹痛いの?」
「ううん、今、自己嫌悪中なの……」
「自己嫌悪?」
野薔薇は訳が分からないといった様子で首を傾げる。
「野薔薇ちゃんとか真希先輩が伏黒くんと普通に話してるのが羨ましいなって、思っちゃって……私が伏黒くんと話せなくなったのは、自分のせいなのに」
2人に八つ当たりしているみたいで自分が嫌になっていると打ち明けるなずな。
しかし、野薔薇からすれば、それは恋の病特有のアレだろうと見当がついた。
「ふーん、なるほどね。真希さんや私が伏黒と喋ってるのが気に食わなくて、一丁前にヤキモチ妬いてたんだ?」
「!?……き、気に食わないとか、そんなこと思ってないよ……!」
「自分に素直になりなさいよ。……でも、なずなもそういうこと気にするのね、ライバルがいた方が案外積極的になったりして?」
「ぇ、と……えっ!?」
なずなはギョッとして言葉を失った。
そ、それはつまり、伏黒くんを取り合う、ということ……?
大真面目に悩み出したなずなに野薔薇はやれやれと肩をすくめる。
「冗談よ、私、伏黒は恋愛対象外だし……ま、ライバルが現れない保証はないけどね?」
伏黒は愛想がないし、ともすれば冷たい印象を受けるが、顔は整っている部類だ。
言い寄ってくる女子がいないとは限らない。
挑発的に目を細めた野薔薇に、なずなは顔を青くして戦慄した。