第12章 まさかの恋敵
案の定、医務室に着く前になずなの腹痛は治まっていた。
「パンダ先輩、すみません。もう大丈夫です……」
「あんま無理すんなよ。医務室で横になっててもいいんだぞ?」
「いえ、たぶん緊張でお腹が痛くなったんだと思います……」
「緊張する要素なんてあったか?」
なずなは気まずそうにしていて答えない。
その様子に目をパチクリとして、まぁ、人間だとそういうこともあんのか、とパンダは自分を納得させると、なずなを連れて来た道を引き返した。
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グラウンドに戻ったなずなは見学ということになり、隅に身を寄せて訓練の様子を眺めていた。
連携訓練は変わらず、なずなの代わりに真希が伏黒と組んで、虎杖と野薔薇の組と手合わせをしている。
頻繁に休憩を挟んで細かく連携内容を確認しているようだ。
……なんだか、イヤだな……
ちり、と胸が痛む。
なんで、どうしてこんなに嫌な気持ちになるんだろう……
伏黒と普通に接することができなくなった自分に不甲斐なさを感じているのもそうだが、真希や野薔薇が伏黒と普通に話しているところを見ていると、なんだかモヤモヤと良くない心持ちがする。
羨ましい、のかな……?
……それとも、狡いって思ってるのかな……?
それこそお門違いだ。
こんなことになってしまったのは、自分のせいなのに。
それを真希先輩や野薔薇ちゃんのせいにしたら、八つ当たりにも程がある。
自分がとても嫌な人間になっているような気がして、なずなは体育座りした膝に顔を埋めた。