第12章 まさかの恋敵
同じようになずなの様子を見ていた伏黒は、自分でも気づかない内にため息をついていた。
最近、渡辺とまともに話していない。
話そうとしても、何か理由をつけられて逃げられる。
さっきのは仮病でもなさそうな感じだったが、煮え切らない。
……つーか、顔も合わせてない気がする。
俺、何かしたのか……?
まったく心当たりがないことに少し苛立ちを覚える。
「……なぁ伏黒、渡辺となんかあった?」
ここのところの異様な光景を虎杖も不可解に思っていたようだ。
「知らねぇよ、こっちが聞きたいくらいだ」
「でも渡辺、突然伏黒にだけ近づかなくなったよな」
悔しいが虎杖の言う通りだ。
ここしばらく彼女の様子を見ているが、釘崎とも虎杖とも、先輩達と接する時もいたって普通、特に変わったところは見受けられない。
明らかに自分だけ避けられている。
やはり何かあったと考えるべきだ。
しかし、本人に聞こうにも、今の状態ではまともに聞けない。
少し前までは普通に会話していたはずだった。
普通に授業も受けていたし、顔だって合わせていた。
だが今はその顔が自分に向けられることはない。
何かが欠けてしまったような心持ちがして、伏黒は知らず知らずのうちに、彼女を目で追うようになっていた。