第12章 まさかの恋敵
そして今日は先輩達と体術訓練だ。
野薔薇はこれに少し期待を寄せていた。
伏黒となずなが手合わせ、あるいは連携練習のために2対2で組み合えば、どうにか打開できるかもしれない。
真希さん、いい感じの対戦カードを頼みます、と念を送る。
「今日は連携の確認するか。バランスよくなるように……恵となずな、野薔薇と悠仁の2人1組な」
その念が通じたのか、今回のメンバーの組み合わせでは、一番いいカードだ。
野薔薇は心の中でガッツポーズした。
まぁ、なずなにとっては荒療治かもしれないが、このくらいインパクトがあった方がクヨクヨしなくていい。
一方でなずなはビクッと肩を縮め、冷や汗をかき始めた。
伏黒くんと2人1組で訓練……?
とてもじゃないが、うまくできる自信がない。
どう転んでも足を引っ張る。
……そしたら、嫌われちゃう……?
顔から血が引くのを感じ、口がカラカラになっていく。
挙げ句の果てに、お腹もぎゅるぎゅると鳴り出した。
「え、ちょ、渡辺、顔青くなってるけど、大丈夫か?」
「……お腹、痛い……」
駆け寄ってきた虎杖に弱々しい声で答え、なずなはうずくまってしまった。
「なずなの奴、変な物でも食ったのか?」
パンダに付き添われて医務室に行くなずなを見送った真希が目をすがめる。
その後ろで野薔薇は天を仰いだ。
ダメだったか……
まさか身体的にもダメージが出てくるとは、予想できなかった。
これは想像以上に重症だ。
こうなった原因が自分にあるので、放置するわけにはいかない。
いよいよ見ているだけではいられなくなったと野薔薇も腹を括った。