第11章 いざ行かん、夢の国
「じゃあ、伏黒のどこが好きなの?」
なずなは目を泳がせる。
ど、どこ……?
どういうところってことだよね?
「い、いつも、優しくしてくれる、ところ……とか」
「アイツそんなに優しいかしら?」
どっちかというとお人好しの虎杖の方が分かりやすい気がする。
しかし、なずなは頑として譲らない。
「や、優しいよ……!困った時に助けてくれるし……」
普段おとなしいなずながここまで言い張るのも珍しい。
それだけ真剣ということだろう。
「それで、アンタは伏黒とどうなりたいの?」
「どうって!?……あの、そのっ……」
「恋人になりたいんじゃないの?」
プシューと煙が出そうなほど真っ赤になっているなずなに、容赦なく畳みかける。
「だったら告白しかないでしょ」
「そ、そそ、それは、お、おこがましいというかっ、その、なんていうか……」
「何がおこがましいのよ?想ってるだけじゃ、叶うわけないでしょ!」
「で、でも、きっと迷惑だよ……私、なんか……」
何が“私なんか”だ。
この子は自分に自信がなさすぎる。
まったく、と野薔薇は肩をすくめる。
「伏黒はアンタの気持ちに気づいてるの?」
なずなはキュッと目をつぶって首を横に振る。
こんなこと、伏黒くんに知られたら、生きていけないよ……!
他にも野薔薇は根掘り葉掘り聞きたいことがあったが、いっぱいいっぱいで声も出ないといった様子のなずなに、ひとまず追及の手を止めた。
この質問攻めが後にどんな影響を及ぼすか、この時はまだ野薔薇も予想だにしていなかった。