第11章 いざ行かん、夢の国
―なずな、好きな人いるでしょ?―
―じゃあ伏黒か―
野薔薇ちゃんの問いかけに、きゅんと痛くなった胸を押さえる。
顔が沸騰したかと思うくらい熱い。
うまく口が回らない。
伏黒くんの顔を思い浮かべると、心臓が早鐘を打ち始める。
私は、伏黒くんのことが、好きなの……?
もちろん野薔薇ちゃんの追及はこれだけでは終わらなかった。
「で、いつから好きになったの?きっかけは?」
い、いつから……?
入学した日に迷子になって、助けてもらった時?
それとも少年院で助けてもらった時?
……いや、入学前にも助けてもらったことがあるから、そこから?
でも、初めはもっと普通に接していたと思う。
顔を見た時や話す時にドキドキするようになったのは、もっと後だ。
「あ、と……えっと……」
きっかけは……困った時にいつも助けてくれること、とか?
……ううん、これはきっかけとは少し違う気がする。
―オマエに呪われたってなんてことない―
唐突に、風邪を引いて寝込んだ時に言われた言葉がフラッシュバックした。
「……え、と、その……私が、風邪引いた時に、の、呪ってもいいよって、言ってくれて……」
おそるおそる顔を上げると、野薔薇ちゃんはキョトンとした表情だった。
そ、そうだよね、何言ってるか、よく分からなかったよね……
もっと分かりやすいきっかけというと……
「……か、風邪引いた前の日に……ぎゅって、された」
あの雨の日、線路に飛び込もうとした私を止めてくれた時のこと。
思い出すだけで、さらに顔が熱くなる。
野薔薇ちゃんの表情は一変、身を乗り出してくる。
「それって抱き締められたってこと!?」
「の、野薔薇ちゃん、声が大きいよ!」
慌てて止めたけれど、誰かに聞かれていないか心配で仕方ない。