第11章 いざ行かん、夢の国
野薔薇は黙々とアルバムを作っていくなずなを怪訝な顔で見ていた。
……いくらなんでも熱心に見すぎてる気がする。
そのうち、1枚の写真を手に取ったなずなの動きが止まった。
少し頬を赤らめ、ほうとため息をついている。
なんとなくうっとりしているその表情を見て、ここ数日間抱いていた野薔薇の中の疑念が確信に変わった。
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アルバム作りがひと段落したところで、野薔薇はそのものズバリの事柄を問いかけた。
「……なずな、好きな人いるでしょ?」
「えっ!?……ど、どど、どうして?」
明らかに狼狽えている返事。
その反応で丸分かりだ。
そうと分かれば白状するまで聞きたくなるのが人情というもの。
まずは可能性の低そうなところから潰していく。
「ふーん、相手は先輩?」
「ち、違うよ!」
狼狽えているが、否定した。
なずなは嘘をつくことに慣れていない。
ここまで狼狽えた状態では、正直にしか答えられないと見ていい。
そうなると相手は1年生。
1年でなずなが普段関わっている男子は少ない。
見知らぬ人に一目惚れという可能性もなくはないが、ちょっと考えにくい。
「虎杖?」
「なっ!?ち、ちがっ……!」
「じゃあ伏黒か」
「ーっ!!」
伏黒の名前を出した途端、なずなが耳まで真っ赤になった。
パクパクと口は動いているが、声は出てない。