第11章 いざ行かん、夢の国
楽しげなテーマメロディーと共に煌びやかに輝くパレードフロートが次々とやってくる。
フロートの上にいるキャラクターやダンスに見入っていると、なずなのすぐ隣を小さな影が走り抜けていった。
「わっ、ぷっ……!」
我先にと前に行きたいちびっ子達だったようだ。
思わぬ方向へ押しのけられ、よろめいてしまう。
慌ててバランスを取ろうとすると、誰かに軽く抱き止められた。
「大丈夫か?」
声の方を見上げると、少し首を傾げる伏黒と目が合った。
……えっと、私、今、伏黒くんにぶつかっちゃった……?
視線を落とすと、自分の手は彼の胸辺りに置かれ、伏黒くんの手は自分の肩を抱いていて……
……すごく近い。
「ーっ!?だ、だだ、大丈夫……!あ、ありがとうっ」
やや遅れて現状を認識したなずなはヒュッと息を呑み、あたふたと伏黒から離れようとした。
「っ!危ねぇぞ、人にぶつかる」
今度は後ろにいた人にぶつかりそうになり、咄嗟に伏黒がなずなの腕を掴んだ。
掴まれた場所から電流が走ったかのように、ビクッと身体が強張る。
心臓が跳ね、顔に熱が集まるのが分かり、赤面を隠すように顔を伏せてしまう。
「……ご、ごめん……ぁ、りがとぅ……」
「あまり慌てんなよ」
か細いなずなの言葉をちゃんと拾った伏黒は、なずなが顔を真っ赤にしていることには気づかない。
なずなにとっては幸いだったが、人混みの中では離れようにも離れられなかった。
肩が、腕が少し触れ、顔が熱い。
隣にいる彼に聞こえてしまうのではないかと思うくらい、バクバクと心臓がうるさい。
夜になっているから分からないが、きっと顔は茹で蛸のようになっている。
とてもじゃないが、なずなの心中はパレードどころではなかった。