第11章 いざ行かん、夢の国
それにつれて曇ってきた伏黒の表情を見て、なずなはオロオロと慌てた。
ど、どうしよう……?
せっかくの夢の国なのに、無理に押しつけるのは良くないよね。
でも、ファストパスの時間だとか理由をつけてここから出ても、たぶん行く先々で野薔薇ちゃんは圧力をかけてきそう……
それじゃ伏黒くんが楽しめなくなっちゃう。
なんとかしないと……!
店内をぐるりと見回して、あるものを発見し、奥の方にある棚に駆けていく。
「ぼ、帽子とか、キーホルダーとかもあるよ……?」
なずなが持ってきたのは、小さなロゴが入っているだけのものや落ち着いた配色のもの。
両手から落とさないよう気をつけながら、どうかな、と伏黒の様子を窺う。
これには頑なな態度だった伏黒も言葉に詰まった。
身長差もあって自然と上目遣いになっているなずなは、八の字に寄せられた眉と犬耳のヘアバンドのせいもあり、クゥーンと尻尾を丸める犬に見えてくる。
「……分かった。じゃあ、これにする」
なずなの手の中にあるロゴの入ったキャップを取り、会計に向かった伏黒は、一瞬手が触れたなずながビクリと固まったことに気づかなかった。