第11章 いざ行かん、夢の国
女子2人が盛り上がっているのを横目に、虎杖が伏黒に笑いかける。
「交流会の打ち上げってことにして大正解だったな」
というのも、再会してからなずなの雰囲気がどことなく沈んでいると感じていたのだ。
しかし、野薔薇にあれこれとアドバイスしているなずなは、無理なく笑っている。
これが昇級祝いだったら、なずなの表情も曇ったままだっただろう。
「俺が死んでるってことになってた間になんかあったんだろ?……何があったか詳しく聞くつもりはないけどさ、ちょっと心配だったんだ」
でも、今の渡辺ならあんま心配ねーなと笑う虎杖につられて伏黒も小さく笑った。
「……そうだな」
本当は平日に行った方が多少空いているのだが、授業があるのでそうも言っていられず、次の日曜日に行くことに決まる。
「ファストパスを取るなら、朝一で並ばないとね」
「当然よ!せっかく行くなら一日中満喫しなくちゃ損なんだから、開園ダッシュに決まってるじゃない」
さらに野薔薇は、寝坊したら叩き起こすからと念押しして、電車の時間まで調べ始める。
「最低でも開園の1時間前くらいがいいんじゃないかな」
「そんな早くに並ぶの!?」
その言葉に驚愕したのは虎杖だ。
開園までは列から動けないから、少なくとも1時間は待たなければならないということになる。
しかし、なずなはさも当然のように続ける。
「開園前には遠方から夜行バスで来た人達も並んでるから、開園30分前とかだと列の後ろになっちゃうの」
列の後ろになるほど入場ゲートを潜るのは遅くなる。
初動が遅れればそれだけアトラクションの列に並ぶ時間が増えると言っても過言ではない。
TDLを一日満喫したいなら、妥協してはいけないのだ。
「……渡辺って、もしかしてメチャクチャ詳しい?」
「何回も行ったことがあるからね、結構詳しいと思うよ」
軽く両手を握り込んだなずなは普段よりも頼もしかった。