第11章 いざ行かん、夢の国
「お祝いって題目じゃなければいいわけね」
お祝いという名目でなくなる以上、なずなにもチケット代の負担は出てしまうが、昇級祝いということを伏せて、お金のかからないものを別で用意すれば、なずなも素直に受け取ってくれるだろう。
そうと決まれば口実作りだ。
ちょうどいい口実……と3人が思案する中、虎杖があることを思いつき、手を挙げた。
「……じゃあ俺の復活祝いとかは?」
「騙してた癖に祝ってもらおうって?何様だよ」
「建前じゃん……」
野薔薇の容赦ない言葉に肩を落とす虎杖。
実のところ、自分の生存を一度も喜んでもらっていない虎杖としては、少し不満もあったりしたが、野薔薇の様子を見るに、そこはもう諦めるしかなさそうだ。
しかし、そうなるとどんな口実を作ろうか、また振り出しに戻ってしまう。
「いざ考えようとすると、パッと思い浮かばないものね……」
野薔薇は腕組みしながら、うーんと頭を捻っている。
向かいの虎杖も同じような表情だ。
「……交流会の打ち上げとかが無難じゃないか?」
「それだ!!」
伏黒の提案に虎杖も野薔薇も口を揃えた。
夕方、任務帰りのなずなに野薔薇から着信が入った。
隣にいるパンダに断って電話に出る。
「もしもし、野薔薇ちゃん?」
『なずな、任務は終わった?』
「うん、もう終わって帰るところだよ」
『じゃ、帰ったらすぐ食堂に来なさいよ』
今日は特に何もなかったはず。
まったく心当たりのないなずなは電話越しに首を傾げた。
「?……今日、何かあったっけ?」
『い・い・か・ら!』
「わ、分かった……」
電話を切った後、パンダから何かあったのかと尋ねられたが、なずな自身にもなぜ食堂に呼び出されたのか分からず、肩をすくめるしかなかった。