第11章 いざ行かん、夢の国
「TDLに行くわよ!」
交流会が終わって2日後、食堂で野薔薇がこう宣言した。
その場にいるのは、虎杖と伏黒。
なずなはパンダと任務に行っていて不在だ。
「……いきなりだな」
「なんでTDL?……あ、そういえば釘崎、前に行きたがってたっけ?」
伏黒は怪訝そうな顔をして、虎杖は純粋に首を傾げている。
対する野薔薇は気の利かない野郎共ね、と小さく舌打ちした。
「なずなの昇級祝いよ、決まってるでしょ」
もちろん自分が行きたいという気持ちもないわけではないので、野薔薇自身も満足できる妙案だ。
野薔薇はふふんと得意げな顔をしている。
しかし、伏黒はそれに懸念を示した。
「渡辺はそこまで祝ってほしくないんじゃないか?」
「確かにあんま嬉しそうじゃなかったよな」
虎杖も団体戦の翌日のことを思い出し、顎に手を当てる。
五条から昇級を伝えられた時も、虎杖の称賛にもなずなは縮こまっていた。
これには野薔薇も渋々ながら同意する。
虎杖の言う通り、昇級を知らされた時のなずなは喜んでいる様子ではなかった。
だが、友達が昇級しても何もしないというのは、野薔薇としても気が済まない。
「でもね、こっちとしても何かしてあげたいじゃない?」
「それこそ押しつけるもんじゃねぇだろ。金のかかるものだと、渡辺も余計に気にしそうだし」
TDLのチケット代を3人で肩代わりしようものなら、なずなが恐縮して楽しむどころではなくなることは容易に想像できる。
そうさせないためには、負い目を感じないような口実が必要だろう。