第10章 東京・京都姉妹校交流会
しかし、昨日の活躍を聞き、呪いと断じることに疑問を持ち始めた。
「虎杖、オマエは何故呪術師をやっている?」
「キッカケは成り行きっス。寂しがりやなんでね、いっぱい人を助けて、俺が死ぬ時は大勢に看取ってほしいんスよ」
その言葉に加茂は、まだ自分が幼かった頃に母が加茂家を出て行ってしまった時のことを思い出す。
―母様がいないなら、呪術師なんてならない!―
銀杏の葉が散り、一面が黄金色に染まる中、泣きながら母を引き止めようと必死だった。
そんな自分に優しく語りかける声。
「憲紀には才能がある。沢山の人を助けられるの。助けた数だけ、あなたは人に認められる。そうしたら、今度は色んな人があなたを助けてくれる。独りなのは今だけだよ」
そう言って振り向いた母は眉を下げて、少し悲しそうな顔で笑っていた。
―いつか、立派な呪術師になって、母さんを迎えにきてね―
「そうか……」
虎杖の理由は自分の原点に通じるものがある。
そして、今が交流会の真っ只中ということは加茂の頭からすっかり抜けてしまっていた。
「それは」
バスンッ
「良い」
バスンッ
「理由だ」
バスンッ
加茂の大きな隙を真希が見逃すはずもなく、短い言葉の合間に3球投げてしまう。
「ストライッ、バッターアウト!チェンジッ!」
「加茂ォ!振らなきゃ当たんねぇぞ!!」
直立不動のまま、三振を取られた加茂に歌姫は黙っていることができず、思わず強い口調になってしまった。