第10章 東京・京都姉妹校交流会
そして一回裏、東京校のトップバッターは野薔薇。
形から入るタイプなのか、真っ直ぐバットを構え、腕を捲るような動作を入れる。
「東北のマー君とは私のことよ」
キリリと宣言した野薔薇に東京側ベンチからヤジが飛ぶ。
「東北のマー君はマー君だろ」
「マー君投手だぞー」
「おかかー」
「……あの、マー君って?」
「楽天イーグルスの投手。メチャクチャ強ぇんだよ」
野球初心者であまり話についていけていないなずなに虎杖が補足する。
「楽天、イーグルス……?」
「そっからかー……」
球団の名前すら怪しいなずなに説明するのは難儀そうだ。
「おいコラ、私の勇姿をちゃんと見てなさいよ!」
野薔薇がベンチに一声忠告して向き直ると、マウンドに何やら運ばれてきた。
セッティングされたのはどこからどう見てもピッチングマシーン。
正面に小さな顔のようなペイントとインクが垂れた『メカ丸』の文字がある。
「ちょっと待て!どう見てもピッチングマシーンだろうが!!」
バットとメットを打ち捨て野薔薇がメカ丸、もといピッチングマシーンを運んできた真依に詰め寄る。
「釘崎がキレた!乱闘だぁ!!」
ベンチにいた東京チームが慌てて駆け寄り、パンダが野薔薇を羽交い締めにして抑える。
「何言ってるの?スペアよ、スペアメカ丸。そっちのパンダが一昨日壊したんだから当然でしょ?」
真依もここぞとばかりに煽り始める。
「ピッ……チングマシーン?よく分からないわ。アナタ機械詳しいのね、もしかしてオタク?」
「次から次へとよくもまぁ……まがりなりにも高専生がよ」
野薔薇の声は怒りで震えていた。