第10章 東京・京都姉妹校交流会
「なずなさ、恵を助けたんでしょ?もっと胸張っていいんだよ」
呪術師やってると、呪詛師を殺すことなんてザラにある。五条自身も、それこそなずなの父の比呂彦だってかなり殺してたはずだ。
けれどなずなにとっては初めての経験。
そしてうまく飲み下すことができていない。
「あの時ああすれば良かった、こうすればうまくいったかもなんて、終わってから気にしたって時間の無駄なわけ。肝心なのは、これからどうすべきか、だろ?」
“後悔先に立たず”とはよく言ったものだ。
最強の呼び名をほしいままにしている五条でさえ、悔やんでも悔やみきれない過去がある。
呪術師として働く以上、後悔は積み重なる。
それを仕方ないことだと割り切ることも、自分の心を守るために必要だ。
しかし、なずなにそれができるかというと、まだ圧倒的に経験が足りない。
そして十分経験を積むまで待ってくれる程、この業界は甘くない。
起こってしまったことはどれほど悔やんでも変わらないし、過去にばかり囚われていても前に進めない。
だが五条から見ると、なずなは割り切れてはいないものの、立ち止まっているようには見えなかった。
「君は自分がどうすべきか、もう分かってるんじゃないの?」