第10章 東京・京都姉妹校交流会
五条が海外出張に行く前、伏黒からある報告書を見せられた。
「何コレ?」
「この前、俺と渡辺が担当した任務の報告書です」
報告書は何枚かにわたって続いている。
こういうのは伊地知あたりに読ませて、内容をかいつまんでしゃべらせた方が手っ取り早い。
ただでさえ、自分は忙しいのだから。
だが、肝心の伊地知は別の任務で不在だ。
「えー、読むの?面倒くさ……」
「読んでください」
口を尖らせて文句を言う五条を伏黒は遮った。
伏黒にしては珍しいその強硬な姿勢に五条も渋々応じる。
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「……なんか、生々しくない?」
面倒くさがりながらも目を通した五条の最初の感想がそれだった。
特に後半から呪詛師や呪霊の様子が事細かに記載されているのだが、報告書にここまで書くか?と疑問に思うレベルだ。
「後半は渡辺が書いたものです」
「なずなが?」
「これを書いた後、渡辺は梔子駅に行って線路に飛び込もうとしました。間一髪で止めましたけど……」
人を殺した罪の意識から後追い自殺を図ったのか。
今回は止められたとはいえ、今後何かあったら同じようなことが起きかねないと言いたいのだろう。
「五条先生、渡辺にこの任務関連のことを追及しないでくださいよ」
「分かったよ、信用ないなぁ……」
念押しする伏黒の真剣な表情に五条はやれやれとため息をついた。