第10章 東京・京都姉妹校交流会
「なずな、ちょっとおいで」
どさくさに紛れて部屋を出ようとしている五条に外に連れ出された。
後ろから夜蛾の呼び止める声が聞こえたが、五条は聞こえないフリをしている。
一体何だろう……?
なぜ自分だけ呼ばれたのか分からないまま、五条の後をついて行くと、生徒達が集められた建物から少し離れた場所で止まり、五条がこちらに向き直った。
「学生証、持ってる?」
「は、はい」
貸してと言われ、ポケットから出した学生証を五条に渡す。
五条もポケットから何やら取り出し、それをなずなの手に載せた。
そこには真新しい学生証、なずなが渡した学生証と違うのは、等級の印字が『三』になっていること。
「なずな、昇級おめでとう」
「あの、えっと、これ……?」
なずなにとっては戸惑いの方が大きかった。
呪術師の昇級は推薦制。
担任の教師は自分が受け持つ生徒を推薦できない。
術師の家系なら血縁者から推薦をもらえることも多いのだが、なずなの家族は全員亡くなっている。
推薦してくれる人に心当たりがないのだ。
「君を推薦したのは渡辺 義郎だよ」
渡辺 義郎さん……
私は数えるほどしか会ったことがないが、お父さんの従兄弟で渡辺家本家の人だ。
そして自分が成人するまでの間、渡辺家当主となっている人物。
渡辺家の当主の決め方は少々複雑で、鬼切が選んだ人物が成人前であれば、成人している本家の男性で血縁の近い者がそれまで暫定当主となる。
鬼切を受け継いだ次期当主として少しは認めてくれたということだろうか。
「……でも……」
なずなは素直に喜べなかった。
この昇級には多少なりともあの任務―
なずなが日野 雪子を殺したことが影響しているはずだから。
俯いたなずなの反応は五条も予想していたことだった。
思い出すのは交流会前に入った海外出張へ行く、そのさらに前の出来事―……