第10章 東京・京都姉妹校交流会
その日の午後、生徒達は大部屋に集められた。
いつも通り少し遅れてやってきた五条が口を開く。
「っつーわけでさ、色々あったし、人も死んでるけど、交流会どうする?続ける?」
「うーん、どうするって言われてもなぁ……」
「当然。続けるに決まっているだろう」
虎杖が腕組みしている後ろで机に足をかけた東堂が発言する。
「と、東堂……」
「その心は?」
「1つ、故人を偲ぶのは当人と縁のある者達の特権だ。俺達が立ち入る問題ではない」
東堂は人差し指、続いて中指を立てる。
「2つ、人死にが出たのならば、尚更俺達に求められるのは強くなることだ。後天的強さとは、“結果”の積み重ね。敗北を噛み締め勝利を味わう。そうやって俺達は成長する。“結果”は“結果”として在ることが一番重要なんだ」
三輪が隣にいる真依に耳打ちする。
「東堂先輩って意外としっかりしてるんですね」
「しっかりイカれてんのよ」
真依の方は憚ることなく、周りに聞こえる大きさの声で答えた。
東堂はさらに薬指を立て、フッと笑う。
「3つ、学生時代の不完全燃焼感は、死ぬまで尾を引くものだからな」
「オマエいくつだよ?」
高専3年生、18歳とはとても思えない発言に五条がツッコミを入れた。
「俺は構わないですよ」
「どうせ勝つしね」
「ぜ、全力を尽くします」
伏黒、野薔薇に続きやや控えめななずな。
「屁理屈だが一理ある」
「加茂君は休んだら?」
治療は受けたものの、まだ頭の包帯が取れない加茂に西宮は休養を勧める。
「異議なーし」
「しゃけ」
「個人戦の組み合わせはくじ引きか?」
なんとなしに尋ねた真希だったが、五条の返答は予想外のものだった。
「え、今年は個人戦やんないよ?」
その場の全員が疑問符を浮かべる。
交流会は毎年初日が団体戦、2日目が個人戦と決まっているはず……
「僕、ルーティンって嫌いなんだよね、毎年その箱に勝負方法入れて、当日開けんの」
投げて寄越された箱の中を虎杖が漁り、紙を取り出した。
―野球―
「や、野球ぅ!?」
虎杖の両隣に楽巌寺、夜蛾が揃って驚きの声を上げる。
「うぉっ、いたの!?」
「どういうことだ、夜蛾?」
「いや、私は確かに個人戦と……」