第2章 放課後遭難事件
なずなからなんとか駅名を聞き出した伏黒は頭を抱えていた。
「どうしてそんな遠くまで行ってるんだ……!」
「つーかそれ、ホントに全部走ったのか?途中で電車に乗ってないか?」
真希の疑問はもっともだ。
なずながたどり着いた駅は高専から30km以上離れている。とても女子高生が2時間弱で走れる距離とは思えない。
「とりあえずそこから東京駅まで来れるか?」
東京駅まで行けば、あとは高専の最寄駅までバスが出ている。
しかし電話口から聞こえてきたのは、なずなの消沈した声だった。
『……ICカード、持ってなくて、お金も……』
「……マジで走ったのかよ、すげーな」
「感心してる場合じゃないですよ……」
鬼切の呪力を使うため、そう言われると伏黒も強く咎められない。
おそらく、なずなの想定以上に身体強化されていたのだろう。
「俺、迎えに行ってきます。禪院先輩、渡辺の部屋からICカードを取ってきてもらえませんか?」
「私を苗字で呼ぶな。別にオマエが取りに行けば……あー、女子寮じゃ無理か」
伏黒を咎めつつ、真希は女子寮へ戻っていった。