第2章 放課後遭難事件
焦るなずなに対して伏黒の声は冷静だった。
『近くに交番は?』
確かに交番なら場所や最寄駅までの道も教えてくれる。
それはなずなも考えたが、あることに思い当たり、行くのを断念していた。
「今、鬼切を持ってるの……交番に行ったら、きっと銃刀法違反で捕まっちゃう……!」
竹刀袋に入れて肩にかけているが、袋から出さなくても重さで竹刀でないことは分かるし、模造刀と誤魔化そうにも、確か模造刀も持ち歩くのはアウトだった気がする。
『……なんで持ち出してるんだ?』
電話口の伏黒がため息を吐く。
「だ、だって、鬼切の呪力をなるべく使いたくて……」
鬼切の呪いを少しでも弱める、そのために持ち歩けるときはできる限り持っておこうと決めているのだ。
まさか、こんな事態になるとは思ってなかったが。
『だったら、駅は?どこか近くに駅はないか?』
「駅、……駅……?」
電話を繋いだまま、周りを見回してみる。
幸い踏切が目に留まった。
しばらく線路沿いを歩き、駅らしいところは見つけたが、また新たな壁にぶつかってしまう。
「……駅名、読めないよ……!」