第10章 東京・京都姉妹校交流会
「オマエ、モテないだろ。出会い頭に自分の話ばっかり」
歌姫の背後、予想だにしない方向から声が上がった。
「金取るぞ!」
「アンタのどこに金取れるだけの聞き手の器量があんのよ」
「うるせー!こんな時にケンカ売ってんじゃねぇよ!」
そこには負傷はしているが、威勢の良い野薔薇とそれを煽る真依がいた。
「アンタ達!」
その様子に歌姫も安堵する。
呪詛師の男は1対3となり、一気に形勢不利になったかと思いきや―……
「わぁ、女の子がいっぱい!モテモテだぁ〜」
顔を綻ばせ、非常に嬉しそうだ。
それを見た野薔薇が顔をしかめる。
「人の話聞いてんのかよ」
いずれにしても3人ならば確実に勝てる。
真依は背を向けて男から距離を取る。
「援護は任せて。誤射されないよう気をつけなさい」
「オメェが気をつけろ!」
煽られた野薔薇が反論した直後、唐突に夜の空が割れて消えた。
五条が帳を破ったのだ。
明るい空を見上げて男はガクリと肩を落とす。
「マジィ?30分も経ってなくない?……逃げよっ」
そして踵を返すと、さっさと脇道から逃げ出した。
「……なんだったんだ、アイツ?」
最後までよく分からない変な呪詛師だった。