第10章 東京・京都姉妹校交流会
歌姫は帳の中に入って学生を探しながら、西宮と連絡を取っていた。
「……了解、西宮もそのまま硝子のとこにいて。大丈夫、三輪は冥さんが見てる」
通話を切ってスマホをしまう。
この帳の効果は五条悟の侵入を拒み、それ以外は出入り自由というもの。
五条は帳の外からこれを破ろうとしているが、電波が断たれたわけではなかったので、五条以外の教員と生徒とは連絡が取れている。
五条の言っていた高専関係者に呪詛師と通じている者がいるというのは勘違いではなさそうだ。
不意に歌姫の背後に現れる人影。
振り抜かれた何かを歌姫はとっさに身を屈めて躱す。
「あれ?絶対斬ったと思ったのに。これだから俺は……」
歌姫が振り向いた先には刀を持ったサイドテールの痩せた男。
呪霊ではない、人間だ。
しかし、男が持っている刀の柄は異様だった。
変色した人間の手のようなものがついており、それと手を繋ぐ形で刀を持っている。
「いいでしょ、コレ。鞣造が作ってくれたんだ。さっき会わなかった?」
歌姫の訝しむ視線に気づき、男が刀を見せびらかす。
その口振りから、鞣造というのは歌姫達が帳に入って間もなく遭遇した斧を持った呪詛師のことだろう。
今は楽巌寺が相手をしているが、人間を素材にして道具を作るようなことを言っていた。
「オマエは非力だから、刀からも握ってもらえって……ねぇ、お姉さんは俺に何をくれるの?」
男は顔を歪めて笑う。
楽巌寺からは極力戦うなと言われているが、この男を放置したら生徒が襲われる危険がある。
戦うしかないか、と歌姫は身構えた。