第2章 放課後遭難事件
日もすっかり沈んだ夕食時、伏黒は高専の食堂にいた。
そこに任務帰りの禪院真希が入ってくる。
「あれ、恵じゃん。新一年生のなずなだっけか、どこにいるか知らないか?」
真希は五条からなずなが呪具使いと聞いたので、会うのを密かに楽しみにしていたのだ。
「放課後から走りにいきましたよ」
「こんな時間までか?……さっき部屋の前を通ったが、いなかったぞ」
「え、戻ってないんですか?」
その時、伏黒のスマートフォンの着信が鳴った。
なずなは、日の落ちた東京で途方に暮れていた。
ここは、どこなんだろう……?
走り込みのために高専を出たのだが、辺りが暗くなっていることに気づいた時には、帰り道が分からなくなっていた。
見知らぬ場所、当然知り合いもいない。
「……そうだ、電話」
今朝教えてもらったばかりの伏黒の番号にコールしてみる。
『渡辺か!?今どこにいる?』
「……わ、分からない、ここ、どこ?」
すぐに出た伏黒に状況を伝える声は自分でもどうかと思うくらいに震えていた。
『落ち着け、携帯で地図を検索すれば、現在地も表示され……あ』
なにやら漏れた不穏な声に、なずなの不安はより高まった。
「ね、ねぇ、どうやったら地図が出るの?」
『……オマエの持ってる携帯だと無理だ』
「え……」
なずなの頭の中は真っ白になり、危うく電話を落としかける。
「ど、どど、どうしよう……!」
「オイ、恵、何泣かせてんだ」
なずなの涙声を隣で聞いていた真希からたしなめられた。
「な、泣かしてないですよ!?」