第10章 東京・京都姉妹校交流会
目の前で起こった一瞬の出来事になずなは目を見張った。
東堂の腕には拘束されていたはずの真希。
虎杖が真希を捕らえていた木の根を叩き割り、東堂が助け出したのだ。
近づいてきた虎杖がなずなの右腕の裂傷を見て眉を寄せる。
「渡辺、遅くなってごめんな。こっからは俺らに任して」
「虎、杖くん……」
待って……ダメだよ……
せっかく生きて帰ってきたのに。
また、死んじゃう……!
そう言いたいのに、仲間が駆けつけてくれた安堵感で言葉が出ない。
「やめろ、虎杖!そいつは俺達でどうこう……ゲホッ」
咳き込む伏黒をよそに東堂はその背後に呼びかける。
「パンダ」
「あいよ」
ぬんと現れたパンダに真希を預ける。
真希は気を失っていた。
呪力量が低いため、呪霊に傷つけられると普通の術師より呪いの影響が強く出るのだ。
でもまだ家入の治療を受ければ、すぐ回復する程度。
「3人を連れて帳を出ろ。西宮曰く、この帳は対五条悟用で俺達は問題なく出入りできる」
「待て!いくらアンタでも……」
続けて指示する東堂に口を挟んだ伏黒を虎杖が遮った。
「伏黒、大丈夫」
不敵に笑ったその顔に伏黒はハッとする。
2ヶ月前、少年院で囮として残った時とは全然違う。
「気づいたようだな。羽化を始めた者に何人も触れることは許されない。虎杖は今、そういう状態だ」
虎杖の様子から東堂の言葉が本当らしいということは分かる。
だが、それとこみ上げてくる気持ちは別物だ。
「次死んだら殺す!」
「そんじゃ死ぬわけにはいかねぇな」
はーい、行きますよーとパンダに抱えられ、真希、伏黒、なずなはその場を離脱した。