第10章 東京・京都姉妹校交流会
抜いた芽を投げ捨て、左手で拾った鬼切で貫くと、ビチビチと暴れた後に動かなくなった。
鬼切を握り直しても、根が伸びてくる感覚はない。
だが、すぐに攻勢に転じられるわけではなかった。
なずなが斬りかかれば、人質同然の真希がどんな目に遭うか。
真希の拘束を解こうにも左腕だけの力では、巻きついた根は切れない。
特級がなずなの右腕が治るまで待ってくれるとも考え難い。
事態が膠着した。
伏黒は見ていることしかできない自分に苛立っていた。
渡辺は自力で芽を取り除いた。
だが、動けないでいる。
真希さんが拘束されているからだ。
術式を開示した影響か、渡辺の右腕の修復スピードは以前見た時より速い。
治れば真希さんを拘束している木の根も切断できるだろう。
そのために欲しいのは時間だ。
この芽は呪力を食う。
なら、食われる以上の呪力を出せば、式神も使える可能性はある。
呪力を振り絞れ、腹が裂けても……!
俺は皆とは違う。守る人間を選ぶ。
俺が一番背負っていない!
だから、俺が先に倒れるなんてことは許されねぇんだよ!
無理やり呪力を練ろうとしている伏黒を見て、なずなは色を失くした。
「伏黒くん、やめてっ!」
今術式を使えば、腹部に打ち込まれた芽がより生長し、致命傷になってしまう。
しかし、その声を無視して伏黒は続けようとしている。
なずなが青くなっていると、今度は真希から制止がかかった。
「恵、やめろ。私達の仕事は終わった、選手交代だ……」
直後、重い衝撃と水飛沫が上がる。
「いけるか?マイフレンド!」
「応!」