第10章 東京・京都姉妹校交流会
「この刀であなたは斬れないかもしれない。けど、こっちは効くんでしょ……!」
呪霊の重心がわずかに後ろに傾いたところで、なずなは横に身を捻る。
間髪入れずになずながいた場所から游雲が飛んできた。
まだ動ける真希がなずなの背後に紛れて近づいていたのだ。
が、呪霊は少しよろめくのみ。
左肩をやられていて本来の力が出せず、踏み止まられた。
でも、まだ……!
真希先輩が作ってくれた隙を無駄にはしない。
さっき伏黒くんが切った目の樹。あそこはたぶん他より脆い。
游雲に意識が向いたのを見逃さず、逆手に持ち替えた鬼切を特級の目に突き立てる。
“ッ!?”
それは特級呪霊に驚きを与えるには十分だった。
相手の間合いに留まるのは危険と見て、切先がわずかに刺さった鬼切を残して距離を取る。
「浅い……っ!」
完全に不意打ちだったはずなのに、となずなは歯噛みする。
“驚きました。ですが、そちらの少女はもう動けませんよ”
「真希先輩っ!?」
特級呪霊の足元から伸びた根を辿ると、それは真希の首に巻きついていた。
かろうじて腕を入れ込み、首を締め上げられるのだけは回避しているが、宙吊りになり、身動きが取れない。
呪霊が悠然と目に刺さった鬼切を抜くと、あっという間に傷は塞がってしまった。
“あなたもこの刀が無ければ術式が使えないのでは?”
その通りではあるが、そんな愚かな真似はしない。
「鬼切っ!」
呼応して飛んできた鬼切を右手に持ち、再び構える。
“成程、離れていても呼び戻せる、と”
なずなの手に収まった鬼切を見て、呪霊の口が不気味に笑った。
「痛っ!?」
突然、右腕に激痛が走った。
目を落とすと木の芽が皮膚を突き破って生えている。
どうして!?
右腕を侵食してくる根を見て、なずなの顔に焦りの色が出る。
「渡辺、術式解け!ソイツは呪力を食う」
「え……?」
背後からの伏黒の鋭い声になずなは即応できない。
どうやって……?
まず浮かんだのがその疑問だった。