第10章 東京・京都姉妹校交流会
“そのナマクラでは斬れないと言ったはずですよ”
駆けつけたなずなにも初めから斬る気はない。
弾みをつけて真希、伏黒と特級呪霊の間に立ち塞がる。
「真希先輩!伏黒くん!」
「なずな、なんでこっちに来た!?」
真希は加茂と狗巻を避難させた時点でなずなの役割は終わりと考えていた。
いち早く特級呪霊の侵入を知らせ、負傷者の手当てと避難、十分以上の役割を果たしたと言える。
「今、東堂先輩がこっちに向かってます。それまで、あの呪霊を足止めします……!」
案の定、答えたなずなの声は少し震えていて、真希はほぞを噛んだ。
ただでさえ格段に強い相手。
しかも背後には負傷した真希と伏黒。
なずなは恐怖を悟られぬよう鬼切を構える。
……あれは、何?
伏黒くんのお腹から生えている植物のようなモノ。
あの呪霊の攻撃だろうか?
たぶん2人を逃そうとすると、呪霊の攻撃が2人に向く。それをすべて防ぎきることは、私にはできない。
特級を前に怯えはあったが、なずなは自分でも不思議なくらい冷静に状況を分析していた。
自分にできること、できないことを選別し、相手に何が有効か考える。
大丈夫、勝つ必要はないのだから。
「……私の術式は、この刀から吸った呪力で身体強化する、ただそれだけ」
そんなシンプルな術式でも、開示すれば弱点を晒したことになる。
縛りは成立した。
……次はもっと速く動ける、もっと強力な斬撃ができる。
一気に距離を詰め、深く踏み込んで鬼切を振り抜く。
“確かに速くなっているようですね”
難なく避けられた。
もちろんこの程度は想定済み。