第10章 東京・京都姉妹校交流会
「急げ。どうせすぐ治してくる」
加茂が2人を急かし、3人は階段を駆け上がった。
3人とも決して特級呪霊とまともに戦おうとはしていない。
狗巻の呪言で止めて、加茂と伏黒で攻撃し、距離を取ることを繰り返し、帳の外を目指しているのだ。
帳さえ抜けてしまえば、学長達と合流できる。
だが、いつ今の均衡が崩れるか分からない。
ただでさえ呪言の効きが悪く、先程伏黒が教員と連絡を取ろうとしたら、スマホを壊された。
相手が呪言の対処法に気づいたら、一気に均衡は崩れてしまう。
呪霊の目的も不明だ。
学長達や高専に待機している術師が動けていない可能性もある。
そうこうしているうちに建物の外に出た。
勢いに任せて屋根に飛び移り、外を旋回していた鵺も伏黒の元へ飛んでくる。
「狗巻先輩が止めてくれる。ビビらず行け」
くしゃりと鵺を撫でて呪霊へと差し向ける。
『と……』
しかし、狗巻の呪言は最後まで紡がれない。
次の瞬間、鵺の左翼の付け根が呪霊に貫かれ、血が吹き出した。
伏黒の隣には膝をついて吐血する狗巻。
先に限界がきたのはこちら側だった。
背後を振り返った加茂に特級呪霊が迫る。
そして反応できぬまま、頭を屋根に叩きつけられてしまった。
勢いで飛ばされた加茂を木の鞠が追う。
間一髪で伏黒が加茂を掴み、伸びた枝は屋根を突き刺す。
「生きてますか!?加茂さん!」
強い言霊を使っていたわけではないのに狗巻の喉が潰れた。
相手がそれだけ格上ということ。
どうする?
いきなり2人やられてしまった。
今戦える自分が何とかしなくては……!
「高菜」
影絵を作ろうとした伏黒の肩を狗巻がポンと叩き、前に出る。
「狗巻先輩!それ以上は……!」
『ぶっ とべ』
特級呪霊が楼閣の屋根まで吹き飛び、屋根瓦を砕いて砂煙が立ち上る。
同時に狗巻も力尽きた。